偽りの仮面 第15話


「それでは、詳しいお話を聞かせてくださいね、C.C.さん」

まるで咲き誇る花のような笑顔と声は大変愛らしく、まるで童話や昔話、旅の思い出を話してくださいと強請られているような錯覚を感じてしまうが、彼女が背負うどす黒い気配に嫌でも気づいてしまい、現在目の前の少女、ナナリーが内心ものすごく怒っていることだけは理解できた。
見た目は菩薩、中身は般若。
さすがマリアンヌの娘。
その辺りは本当に母親そっくりだ。

C.C.が今いるのはナナリーの部屋だった。
ルルーシュが帰ってくる前にスザクが壊した扉を修理する必要があるため、咲世子にルルーシュの部屋から追い出された。空いている部屋の扉と取り替えてこの場をしのぎ、後日扉の修理を頼むのだとか。あとはC.C.が何事もなかったかのような顔であの部屋に戻れば、さすがのルルーシュでも気付かないだろう。

この部屋にはナナリーとC.C.の他にスザクもいて、今スザクはものすごく真剣な表情で昨夜の監視カメラの映像を見つめていた。モニターがこの部屋にある以上、あの監視カメラを設置したのはナナリーなのだろう。兄を監視とは、随分といい趣味をしていると呆れてしまう。ちらりとみると、すでに風呂に入りシャツ一枚でベッドで寝ている私と、私の服の洗濯と風呂を終えて戻ってきたルルーシュが、部屋着から寝間着に着替えている場面だった。 服を脱ぐルルーシュを食い入るように見つめるスザクにドン引きしたため、さっさとナナリーにチクる。

「ナナリー、枢木スザクがルルーシュの着替を凝視しているがいいのか?」
「え?スザクさん!」
「え!?あ、はい、ゴメンなさいっ!!」

ナナリーに叱られて我に返ったスザクは、慌てて顔をこちらに向けて謝った。
その間にルルーシュの着替えは進み、パン一姿を見られずにすんで、C.C.はフフンと鼻で笑った。スザクはC.C.の反応でハッとなり画面に目を戻したがすでにルルーシュはベッドに潜り込む所で、ものすごく悔しそうな顔をしていたが、すぐに驚愕した大きな眼で画面を見つめた。ベッドには既にC.C.が横になっていたのに、ルルーシュは迷うこと無くその隣に横になったのだ。
あまりにも自然に、当たり前のように女性と同衾するルルーシュに「うそだ、そんな、ルルーシュが・・・」と、スザクは呆然とつぶやいた。そんなスザクの反応に、ナナリーはあらぬ想像をしたのだろう、顔色を無くしていた。

「私もルルーシュも昨日は疲れていたからすぐに眠った。第一、ナナリーがいるこの場所で、ルルーシュがそんなことをすると思うのか?」

ナナリーは匂いにも敏感だ。
やることをやれば、その匂いが部屋に残る。
いくら換気をしても、ナナリーの嗅覚では異変に気付く恐れもある。
そんな危険を犯すはずがないと告げれば、スザクは目を見開いて驚いた。

「・・・う、うそだ。ルルーシュが・・・僕のルルーシュがっ!」

僕のなのに!と呻くスザク。
C.C.は昨日は何もないと言った。
そしてここでは何もしないと。
それはつまり、ここではない場所で何かをしているということ。

「私のお兄様ですよ、スザクさん」

にっこり笑顔でナナリー

「何を言う、私はルルーシュと将来を誓い合った仲だ」

不敵な笑みを浮かべC.C.が言った。
その瞬間、部屋の空気がぴしりと固まった。



どれ位そうしていただろうか。
いつの間にか扉の修理を終えて戻ってきた咲世子がお茶を入れてくれたので、それを切っ掛けにナナリーが一つの提案をしてきた。

「共同戦線ということか?」
「いえ、同盟です」
「え?共同戦線も同盟も同じだろ?」
「いえ、まったく違いますので、今度調べてみてくださいね?」

ニッコリ笑いながら言うので、ヴィ家兄妹は無条件でスザクに激甘かと思ったらそうでもないらしい。これは兄を奪い合っている状況だからだろうか?

「・・・いいだろう、私たちは同盟を組むわけだな、ルルーシュに関する同盟を」
「そうです。お兄様を守るための。もちろんゼロも含まれていますよ?」
「気づいていたのか。流石だな、ナナリー」
「当然です。おそらく踵の高い靴を履かれているので分かり難かったのですが、足音もお兄様と同じ、話し方、イントネーションも同じ、そしてあの発言内容。気づかない方がどうかしています」

それは暗に気づかなかったスザクに対する嫌味で、ナナリーの言葉がグサグサと刺さっているスザクはしょんぼりしていた。ルルーシュが絡むとスザク相手でも容赦がないなと、C.C.は内心冷や汗を流していた。

「もしかして、あの偽ゼロはルルーシュを守るためか?」
「はい。残念ながらお兄様の体力では危険な事も起こりやすいと思い、スザクさんと咲世子さんに護衛をお願いしました。あ、スザクさんは囮も兼ねてます」
「囮って、酷いよナナリー」
「なるほどな、あれだけふざけた格好なら囮として最適だ」
「ふざけてないよ!失礼な人だな君は」
「お前ほどではないよ」

再び一触即発状態になった二人に、ナナリーは時間を見て下さいと言った。

「お兄様がいつ帰ってきてもおかしくない時間です!喧嘩は後にしてください!」

普段大人しい子の怒鳴り声は胸に響し、何より怖い。二人は速攻で口を閉ざした。

「では、私たちの間での取り決め・・・紳士協定の話をしましょうね?」

にっこり笑顔で言うのだが、やはり背後にはどす黒いものが見えた。

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